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コラム

SSBJ基準とは何か?国内企業のサステナビリティ情報開示への影響

目次

はじめに

SSBJ(Sustainability Standards Board of Japan:サステナビリティ基準委員会)基準は、日本企業のサステナビリティ情報開示を強化するために策定された新たな枠組みです。この基準は、財務情報とともに環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する情報の開示を求め、企業の持続可能な成長を支援することを目的としています。
本コラムでは、SSBJ基準の最終版が2025年3月末までに公表される予定であることを踏まえ、その概要と企業への影響について解説します。

1. SSBJ基準の概要

SSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)基準は、日本におけるサステナビリティ情報開示の新たな枠組みとして策定されました。国際基準との整合性を図りつつ、日本企業の実態に即した透明性の高い情報開示を求めることを目的としています。

この基準は、財務情報と並行して、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する情報の開示を強化し、企業の持続可能な成長を支えるものとなります。特に、企業のリスク管理や気候変動への対応、ステークホルダーとの対話を促進することが期待されています。

また、SSBJ基準はプライム上場企業への適用が想定されており、段階的な義務化が議論されています。適用初年度には、比較情報やスコープ3のGHG排出量の開示に関する経過措置も設けられています。

2. SSBJ基準策定の背景

国際的なサステナビリティ開示基準の開発を目的とするISSB(International Sustainability Standards Board:国際サステナビリティ基準審議会)が2021年11月に設立されたことを受け、日本おけるサステナビリティ開示基準の開発と国際的なサステナビリティ開示基準の開発に対する意見発信を行うための体制整備の必要性等が市場関係者より示されたことを踏まえ、2022年7月にSSBJは設立されました。その背景には、ESG投資の拡大や企業ガバナンス強化の必要性があり、非財務情報の透明性向上を促進する目的がありました。

SSBJ基準の策定は、近年の国際的な動向に対応する形で進められ、GRI(Global Reporting Initiative)の独立審議機関GSSB(Global Sustainability Standards Board)との協力が強化されています。また、欧州や米国では、サステナビリティ情報開示の規制が進んでおり、日本企業もこれに対応する必要があります。さらに、日EUグリーンアライアンスや欧州のCSRD(企業サステナビリティ報告指令)などの国際的な取り組みとの連携が求められています。

3. 企業に求められる情報開示の内容

SSBJ基準では、企業に以下の情報開示が求められます。

  • ガバナンス:取締役会の監督体制、サステナビリティ戦略の方針。

  • 戦略:気候変動リスクの評価、ビジネスへの影響、適応戦略。

  • リスク管理:ESGリスクの特定、評価、管理手法。

  • 指標と目標:GHG排出量の測定・削減目標、その他のサステナビリティ指標。

企業はこれらの情報を財務報告と統合し、長期的な企業価値の向上に結びつけることが求められています。特に、SSBJ基準ではシングルマテリアリティの考え方を採用し、企業の財務パフォーマンスに関連する情報開示を求めています。ただし、社会的影響に関する情報も、財務的影響がある場合には開示が推奨されています。

4. 国際基準との違い

SSBJ基準は、GRIスタンダードやIFRSS1・S2基準などの国際基準と連携しながら、日本市場の特性を反映したものとなっています。特に、以下の点で独自のアプローチが取られています。

  • GRIとの連携強化:GRIとMoU(協力合意)を締結し、国際基準との整合性を確保。

  • 日本企業向けの適用指針:日本独自の規制環境やビジネス文化に対応。

  • 中小企業向けの配慮:大企業だけでなく、中小企業の対応負担を軽減するための指針を策定。

  • 欧州政策との連携:CSRDやCBAM(炭素国境調整メカニズム)との適合性を考慮。

5. 実務への影響

SSBJ基準の導入により、企業の情報開示プロセスが大幅に変革されることが予想されます。特に、以下の影響が考えられます。

  • データ管理と開示の強化:サステナビリティデータの収集、整理、開示が必須となる。

  • 第三者保証の必要性:信頼性を高めるため、情報開示の正確性を検証する仕組みの導入。

  • 統合報告の推進:財務情報と非財務情報を統合した報告書の作成。

  • 投資家や規制当局への対応強化:ESG投資家や国際規制への適応が求められる。

  • デジタルツールの活用:データ収集や開示プロセスの自動化が進み、企業の負担を軽減。

また、2025年にはSSBJ基準の最終版が確定し、2027年の適用開始に向けた詳細な実施ガイドラインが発表される予定です。このため、企業は今後数年間で基準の適用範囲や要件の明確化に備え、対応計画を策定する必要があります。特に、企業の内部プロセスの見直しや、新たな開示フォーマットの開発が求められることになるでしょう。

6. サステナビリティ経営の重要性と今後の展望

企業にとって、サステナビリティ経営は今後の競争力向上に不可欠な要素となります。SSBJ基準の導入は、単なる規制対応にとどまらず、企業価値の向上や長期的な成長戦略と密接に関連しています。今後の展望として、以下のような動きが予測されます。

  • ESG投資の拡大:投資家はSSBJ基準を活用し、企業のサステナビリティ戦略を評価。

  • 開示基準の進化:より詳細な情報開示が求められ、企業の対応が高度化。

  • グローバル展開の加速:国際市場での競争力を高めるため、サステナビリティ対応が重要に。

  • GX(グリーントランスフォーメーション)の推進:日本政府のカーボンニュートラル政策と連携。

  • 日EUグリーンアライアンスの活用:欧州の規制動向に適応しながら国際競争力を強化。

企業がSSBJ基準を適切に活用することで、投資家や消費者の信頼を獲得し、持続可能な経営を実現することが可能となるでしょう。また、日本政府や規制機関の動向を注視し、柔軟に対応することが今後の成功の鍵となります。



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〈出典元〉

SSBJによるサステナビリティ開示基準案の概要:サステナビリティ基準委員会(SSBJ)事務局
https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/20240423.pdf