CSRD(企業サステナビリティ報告指令)とは?日本企業が対応をすべきこととマイルストーン
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近年、企業におけるサステナビリティへの取り組みがますます重視される中、欧州連合(EU)が導入した新しい法規制「CSRD(企業サステナビリティ報告指令)」が注目を集めています。EUで企業活動を展開する日系企業も条件を満たせばCSRDの対象になるため、今後対策を講じる必要性があります。本記事では、CSRDの概要、対象となる企業、そして具体的な開示内容や対応プロセスについて解説します。
CSRDとは?
CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)は、企業のサステナビリティ情報の開示を義務付けるEU指令です。従来のNFRD(非財務報告指令)を拡張し、より詳細かつ網羅的な報告を求めています。この指令の具体的な内容は、4つの報告領域と3つのトピックスによって構成されています。開示要件についてはESRS(European Sustainability Reporting Standards)で定義され、企業が取り組むべき環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の領域にわたる詳細な報告が求められます。*1)
ESRSとは?
ESRS(European Sustainability Reporting Standards・欧州サステナビリティ報告基準)とは、EUの欧州グリンディールの一環として制度化されたCSRDの対象となる企業が、報告書を作成する際に準拠しなければならないサステナビリティ情報の開示要件を定める基準です。*2)
ESRS(European Sustainability Reporting Standards)による具体的な開示要件
CSRDの指針に基づき、企業は以下の領域で詳細な情報を開示する必要があります。
4つの報告領域
1.ガバナンス
2.戦略
3.影響およびリスク・機会の管理
4.指標と目標
3つのトピックス
1.環境(E):気候変動、汚染、水と海洋資源、生物多様性、資源利用と循環経済
2.社会(S):自社の従業員、バリューチェーンの労働者、コミュニティ、消費者と最終利用者
3. ガバナンス(G):企業の行動倫理
開示プロセスは「ダブルマテリアリティ評価」や「ギャップ分析」などを通じて進められ、企業の透明性や持続可能性の向上を目指します。
CSRDの対象企業と適用開始時期(日系企業に関連する要件のみ記載)
CSRDの適用対象は、以下の基準に基づいて決定されます。
地域区分 | 対象 | 条件 | 適用開始時期 |
EU域内 ※日系子会社等 | 大規模企業 | 以下の要件のうち、2つ以上を満たす企業 (1)総資産2500万ユーロ超 | 2025年4月〜 (2026年3月期) |
上場中小企業 | 零細企業(以下要件のうち2つ以上を満たす)を除く上場企業 (1)総資産35万ユーロ以下 | 2026年4月〜 (2027年3月期) | |
EU域外 | EU域内に子会社・ | EU域内の売上が2期連続1.5億ユーロを超え、大規模企業に該当するEU子会社か、 | 2028年4月〜 (2029年3月期) |
これにより、日本企業であってもEU域内で事業を展開している場合、一定の条件を満たすとCSRDの対象となるため、早急な対応が必要です。*3)
開示の流れ
1. 制度概要の理解
CSRDに基づく開示プロセスを始めるために、まず以下を確認します。
適用対象の確認
自社がCSRDの対象となる条件(規模、業種、地域など)を確認します。連結免除の有無、適用開始年度の確認
企業グループにおける適用範囲やスケジュールを明確にします。ESRS 1(全般的要求事項) / ESRS 2(全般的開示事項)の要件理解
サステナビリティ情報開示の全般的な概要を把握します。
2. 簡易ギャップ分析
ESRS 2(全般的開示事項)に基づく簡易ギャップ分析
既存のサステナビリティ情報開示データを確認し、CSRDが求める内容とのギャップを把握します。
ここでは、「開示要件の全体的な概要」を理解することが主な目的です。
3. ダブルマテリアリティ評価
ESRS 1(全般的要求事項)を活用した重要項目の特定
「財務的マテリアリティ」と「環境・社会的マテリアリティ」の両方を評価し、自社にとって重要なサステナビリティトピックを特定します。開示要件の詳細な理解
特定された項目に基づき、ESRSの詳細要件を理解します。
4. 詳細なギャップ分析
テーマ別資料を活用
ダブルマテリアリティ評価で特定された重要トピックについて、より詳細な分析を実施します。
例:気候変動、水資源管理、社会的影響など。不足部分の特定
現行のデータ収集プロセスや報告の仕組みで不足している部分を洗い出します。
5. 対応ロードマップ策定
テーマ別資料を基にした実行計画の作成
開示要件を満たすための実行計画(ロードマップ)を策定します。以下の項目を含めます:責任部署の割り当て
各トピックに対応する担当部署を明確化。実施時期の設定
短期・中期・長期での優先順位付け。リソースの確保
必要な人員、システム、外部専門家の手配。
日本企業にとって、特に欧州規制特有の要件への理解と対応が課題となります。
まとめ
CSRDは、単なる規制対応にとどまらず、企業価値の向上や国際競争力の強化につながる可能性があります。ESG投資や株主資本コストの低減を意識した情報開示が拡大する中、サステナビリティ情報の透明性ある開示は、投資家や取引先からの信頼を得るうえで不可欠です。
企業は、CSRD対応を通じて、自社のサステナビリティ戦略を再構築し、グローバルな市場での競争力を高める機会として活用すべきでしょう。
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<参照元>
*1)出典:European Commission「Corporate sustainability reporting」:https://finance.ec.europa.eu/capital-markets-union-and-financial-markets/company-reporting-and-auditing/company-reporting/corporate-sustainability-reporting_en
*2)出典:European Commission「The Commission adopts the European Sustainability Reporting Standards」:https://finance.ec.europa.eu/news/commission-adopts-european-sustainability-reporting-standards-2023-07-31_en
*3)出典:European Commission「DIRECTIVE (EU) 2022/2464 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL」(2022/12/14):https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32022L2464#:~:text=2.%C2%A0%C2%A0%C2%A0Member%20States%20shall%20apply,3(1)%20of%20that%20Directive.
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