GRIとSSBJの連携強化:サステナビリティ開示への総合的対応
11月中旬、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の招きで、グローバル・リポーティング・イニシアティブ(GRI)のバスティアン・バック基準開発部長と、筆者が理事を務めるGRI審議機関(GSSB)のキャロル・アダムス議長が来日し、国内各方面のステークホルダーとの対話を持った。
筆者もいくつかの会合に同行し、プレゼンも一部担当させていただいた。
SSBJと日本会計士協会(JICPA)の主催で13日に開かれたセミナーには200人を超える実務家が集まり、サステナブル開示基準の動きへの関心の高さをうかがわせた。
日本企業の間では、欧州企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の施行で欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)への注目が集まるが、バック氏は「ESRSはGRIスタンダードを基に開発されたもので、すでにGRIに沿った開示をしている多くの日本企業にとって対応は難しくない。ESRSが十分にガイダンスを提供していない部分はGRIを参照できる」とした。アダムス氏は「GRIはフロントランナーとして、自主的な枠組みの中でサステナビリティ開示の可能性を切り拓いてきた。GRIをベースにマテリアリティの特定やデータ収集を行っておけば、様々な基準が登場するのに惑わされず、時代を先んじて対応できる」とGRIの利点と優位性を強調した。
翌日のJICPAとの会合では、大手会計事務所のリーダーらから2人に矢継ぎ早に質問が浴びせられた。
その中で明らかになったのは、今後サステナビリティ開示の第三者保証が求められる中で、投資家の判断に資する信頼できる情報を担保するためには、GRIスタンダードが提示している、企業が経済・環境・社会にもたらすインパクトにおけるマテリアリティをまず押さえ、それを基に財務的に重要なリスク・機会を特定するというロジックが大切だという共通認識だった。
翌々日に訪れた環境省では、環境デューデリジェンスの普及にあたって、GRIスタンダードが大いに活用できることが認識された。
今回の来日を機に、SSBJとGSSBは覚書(MoU)を結び、上記のインパクトと企業の財務リスク・機会の理解の関係性の探求について協働することに合意した。*1)
GRIでは、来年3月までに最終基準が発行されるSSBJをはじめとする各国の法的開示基準とGRIスタンダードを連携させるガイダンスを作成する意向だ。*2)
これにより、GRIとSSBJ(あるいはIFRS S基準)の併用をベースにしたESRSへの対応促進を狙っている。
アダムス氏とバック氏は3日間の日程の最後にゼロボード本社を訪れ、これまで様々な形でGRIの発展に力を尽くして来られた日本のステークホルダーと会談。
GRIスタンダードの普及や基準開発への参加を促すため、さらなる日本語での情報提供と、日本事務所もしくはアンバサダー設置の可能性を議論した。
ゼロボードの開発メンバーも今回直接GRI幹部とESGデータの効率的な収集・活用の可能性を議論する機会を得て、国際的に通用するデジタルツールの開発への意を新たにした。
<参照元>
*1)サステナビリティ基準委員会(SSBJ)がGRI グローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB)との間でより良い企業報告に向けた取組みに関する基本合意書(MOU)を締結
https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/news_release_ssbj_20241114.pdf
*2)サステナビリティ報告、GRI及びGRIスタンダード
https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/20241114_07.pdf