ESG関連データの収集・管理・開示支援なら

パナソニック株式会社

世界初・水素を活用した工場のRE100化実証で「zeroboard」を採用。パナソニックがゼロボードと目指す未来とは

サイトを見る


ご担当者

グローバル環境事業開発センター
環境エネルギー事業推進室 室長

立石 貴誕 様


2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を明記した改正地球温暖化対策推進法が2022年4月から施行されました。官民あげてカーボンニュートラル実現に向けて取り組む中、国内外から注目されているのが水素です。水素と酸素を化学反応させて電気を発生させる燃料電池はCO2を排出しないため、クリーンな次世代エネルギーとして期待が寄せられています。
そこで今回は、世界初(注1)、水素を活用した工場の再生可能エネルギー100%化に向けた実証を行っている施設「H2 KIBOUⓇ(注2) FIELD」を稼働させ、「RE100化ソリューション」に取り組むパナソニック株式会社に伺い、「zeroboard」を選んだ理由や今後の展望についてお聞きしました。
(注1)工場の稼働電力を賄う自家発電燃料として本格的に水素を活用した実証において(2022年3月31日現在、パナソニック調べ)
(注2)H2 KIBOU および H2 KIBOUのロゴは、パナソニック株式会社の商標として登録されています


  • 課題・ 導入背景
    • RE100化ソリューションの事業化に向けてCO2排出量の可視化が必須だった
    • サプライチェーン全体でCO2の削減に取り組む必要があった
  • ゼロボードに 決めた理由
    • 「中小企業も含めたサプライチェーン全体でCO2排出量を下げていく」というゼロボードの考え方に共感した
    • 直感的に操作ができ、兼任の担当者も使いやすい
  • 導入効果・今後 期待される効果
    • 工場単位でCO2排出量を可視化できたため、手をつけるべき優先順位が明確になった 
    • コンサルティングを通じて知見が蓄積され、工場やお客様に説明する力がついた 
    • ゼロボードを中心にサプライチェーン全体がつながっていく将来像を描けた

RE100ソリューションの実証施設「H2 KIBOU FIELD」に「zeroboard」を導入

――立石さんは普段、「H2 KIBOU FIELD」のある滋賀県の草津にいらっしゃるとお聞きしています。初めに、本プロジェクトの立ち上げ背景からお聞かせください。

立石様(以下、お答えはすべて立石様):燃料電池事業部門の経責メンバーと脱炭素への取り組みについて話をし始めたのが2020年10月頃です。当社は多岐に渡る水素関連の商材・技術を保有しておりますが、それぞれが単独に事業・技術開発を進めていることに課題がありました。それらを一つにまとめて社会課題を解決することをRE100(注2)と見定めて、事業開発に取り組みました。
(注2)企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ

――パナソニックが進めている「H2 KIBOU FIELD」と「RE100化ソリューション」について教えていただけないでしょうか。

「H2 KIBOU FIELD」は、純水素型燃料電池と太陽電池を組み合わせた自家発電により、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うRE100ソリューション実証施設です。本格的に水素を活用する工場のRE100化の実証は世界で初めての試みです。そして、「H2 KIBOU FIELD」で得た経験やノウハウを活かし、お客様のRE100化をサポートするのが「RE100化ソリューション」です。

「H2 KIBOU FIELD」では純水素型燃料電池、太陽電池、蓄電池の3つを組み合わせることで、再生可能エネルギーを用いて発電した電力を安定的に賄うことに成功しています。自然エネルギーである太陽光や風力は変動します。また、お客様の需要も事業活動に応じて変動しますが、蓄電池と燃料電池を入れることで電力の安定供給を実現しています。2022年4月のスタート以来1年ほど安定運用できていて、実際にRE100を目指しているお客様、国内外政府関係者などが視察に来るなど、国内外の多種多様な業界から注目していただいています。

「zeroboard」を活用し、サプライチェーン全体でCO2排出量の削減を目指す

――「H2 KIBOU FIELD」において「zeroboard」を導入いただきました。どのような背景や課題があったのでしょうか。

パナソニックは、主に物を販売する事業を展開していますが、RE100を事業化する場合には、提案から設計施工・運用保守・改善とソリューションの形にする必要があります。当然ながら、提案フェーズではお客様のCO2排出量を可視化することが必要になります。そのためには、自社だけで完結するのではなく、他社と連携するべきだと考えました。それが2021年3月で、偶然新聞の記事でゼロボードを知って私からご連絡しました。

代表の渡慶次さんからは印象的なお話をいくつもいただきました。中でも「カーボンニュートラルは1社だけではなく、サプライチェーン全体でCO2排出量を削減する必要があります。そのため、大企業だけでなく、中小企業も含めてCO2排出量を削減できるサービスを考えています」と言われたことが響きましたね。その後、私たちが事業開発を進めていく中、「zeroboard」を2022年2月から導入しました。

工場単位でのCO2排出量可視化に成功。事業単位での算定に比べより細かい算定が可能に

――「zeroboard」の使い勝手はいかがでしょうか?

シンプルなシステムなのでとっつきやすく、誰でも簡単に使い始めることが出来るという印象を受けています。複雑な画面ではなく、ここを押すと次はこうなるというのが直感的に分かります。そのため、兼任の担当者でも触りやすいシステムになっていると思います。

算定に向けては、工場や経理部門と多くの関連部門から入力するためのデータを集めてくることが難しいわけですが、ゼロボードにコンサルティングで入ってもらい、各部門にどのような説明をすればスムーズに進むのかまで指導いただいているため問題なく進んでいます。とても親身になってくださるのでありがたく思っています。

勉強させていただいた結果、私たちが工場やお客様に説明できるようになったことは大きな意味があります。こういった積み重ねがサプライチェーン全体でCO2排出量を削減していくことにつながります。

――「zeroboard」を導入してよかった点を教えてください。

工場単位でCO2排出量を可視化できたことです。算定は事業単位で行うことが基本ですが、工場単位で実現したいと相談したところ、まだ基準化されていない領域にもかかわらず一緒に取り組んでくださり、工場単位の見える化が実現できました。これは大きな成果です。その結果、工場長をはじめとする工場の関係者が、CO2がどこで多く排出されているのかを把握できるようになり、対策を優先的に進めるべき箇所が明確になりました。

製造業において工場はサプライチェーンの中心にいます。そこで見える化が実現すると、事業単位の算定でおおざっぱに把握していると見逃してしまうような細かい部分のCO2排出量を削減できます。現場で細部までこだわる難しさはありますが、そこに取り組まないとCO2排出量ゼロにたどりつけないので必要なことだと考えて進めています。

ゼロボードを中心につながりを広げ、RE100化ソリューションで水素社会の実現を目指す


――今後の展望について、お聞かせください。

2050年にカーボンゼロを達成するために、水素社会の実現を目指しています。日本は燃料電池の領域において水素の利活用に関する技術が世界でもトップクラスです。また、省エネルギーの分野は技術的にもリードしていて、ヨーロッパなど海外にも展開されています。水素によるカーボンニュートラル社会の実現に向けて、政府とも連携しながらルールづくりを含めて動いています。

そのためにもまずは自社のCO2排出量を可視化し、削減を進めます。そしてこれをソリューション化し、お客様に提供していきます。「zeroboard」の導入によって事例ができたので、自社工場の実績を示しながらお客様の実情に合わせた提案ができるようになりました。「RE100化ソリューション」がお客様の元で稼働するまでには1年程度かかりますが、製造業を中心に前向きな話が進んでいます。

――「zeroboard」が先進的な事例作りのお役に立ててうれしく思います。

「RE100化ソリューション」を提案する際には「zeroboard」も一つのセットで考えています。可視化まで含めたお手伝いや改善をソリューションとして提案しているので、ゼロボードのサービスも紹介していきたいと考えています。

一方で、ゼロボードのお客様に私たちのソリューションがお役に立てることがあればうれしいですね。相乗効果で顧客基盤ができていくことにも期待しています。私たちの「RE100化ソリューション」はカーボンニュートラルに向けたソリューションの一つに過ぎません。さまざまな企業や自治体が取り組んでいるソリューションを組み合わせていくことが必要で、ゼロボードがその部分に取り組んでいる点にも魅力を感じています。

私が将来像として描いているのは、「zeroboard」を中心に大企業だけではなく中小企業を含めてサプライチェーン全体がつながっていくことです。ゼロボードはサプライチェーンの中心にいる会社だと捉えています。ビジネスのつながりや価値の広がりを共につくっていけるようなコミュニティを担っていただけることを期待しています。

――ありがとうございます。 2023年3月にプレオープンしたユーザーコミュニティ「All Aboard!」も同じ思いで立ち上げました。参加者がインタラクティブに相談や情報を提供し合える場として、企業担当者が実際に抱える課題の解決に踏み込み、脱炭素経営の推進に繋げることを目的としています。

描いていたことが既に始められていて驚きました。脱炭素を推進していくためにはそのようなコミュニティが必要不可欠だと思います。パナソニック社内でも自発的な取り組みが立ち上がっています。

引き続き、一社では成し得ないカーボンニュートラル実現に向け、社会全体で継続的かつ積極的に取り組めるプラットフォームの構築により、脱炭素経営を支援してまいります。本日はお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。



関係者のコメント

株式会社ゼロボード 

ビジネス本部事業開発部 マネージャー 

脱炭素エキスパート

野底 琢
この度はインタビューにご協力いただきありがとうございました。 また、「世界初・水素を活用した工場のRE100 化実証」において、算定支援者として関わらせて頂けたこと、誠にありがとうございました。 RE100 化実証だけでなく、貴社が開発・販売される燃料電池に基づく工場向けの脱炭素ソリューション開発まで、今後とも末永く、ご支援させていただきたく存じます。