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株式会社中国銀行

地域と金融機関は共同体。「Zeroboard」のホワイトラベル提供で地域企業のGHG算定を促進する脱炭素支援の狙いとはー

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ご担当者

コンサルティング営業部ESGファイナンス/コンサル担当

次長  河内 浩治 様

調査役 荒川 善隆 様

地域と金融機関は共同体。地域を先導する立場として、地域企業の事業基盤や地域の産業基盤の強化のための脱炭素支援策を

――本日はよろしくお願いいたします。まずは、岡山県の産業構造から教えていただけますか。

荒川様:岡山県は全国平均に比べて、石油、鉄鋼、化学、輸送用機械が多くなっています。また、水島工業団地に立地する関連企業様が集積しています。それに関連して運輸、産業廃棄物があるのと、地場産業で言えば有名な学生服を代表とする衣服、繊維の製造業も多い地域です。大手石油会社や自動車OEMのサプライヤーも多く、一次産業より製造業が多く、大企業様より中小企業様が多いと言えます。

水島工業地帯(水島コンビナート)

――中国銀行様が脱炭素支援に取り組む理由を教えてください。また、中国銀行の経営にとってなぜ脱炭素支援が必要だとお考えでしょうか。

荒川様:中国銀行が地域脱酸素に取り組む理由としては、まず脱炭素は社会課題だと認識しています。その解決に向けて、産業を問わず多くの中小企業様と取引を持つ我々地方の金融機関という立場は、テークホルダーから「支援者」としての役回りを期待されていると考えています。それを自覚し、先導する存在にならなければならないという思いから取り組んでいます。

次に、中国銀行の経営にとってなぜ脱炭素が必要かについてです。金融機関として地域企業の気候変動対策を支援することで、地域企業様の事業基盤や地域の産業基盤の強化につながります。それが、ひいては中国銀行自身の収益機会の獲得や信用リスクの減少になることで、我々の経営の安定にもつなげていくことができると理解しています。脱炭素を進める上で、将来的には投資が控えていて、それが我々のビジネスチャンスになっていくと考えています。

――すぐに脱炭素で資金需要が生まれると言うことではなく、将来を見据えて取り組まれていらっしゃると?

河内様:工業生産額で言うと大企業様が大きなウェイトは占めてはいますが、地元の中堅・中小企業様が周りに多く点在しているのが実情です。

今後、グローバルな変革、例えば今で言う脱炭素の流れが生じた時に、地元の中堅・中小企業様が取り残されてしまったとしても、地方銀行の場合その地域から営業の中心を移せないんですよね。地域企業様と密接な構造になっているので、地元の中堅・中小企業様がしっかりと生き残っていただくと言うか、事業を継続していただけるような取り組みが必要なんだろうと思っています。

サプライチェーンの枠組みの中から、中堅・中小企業様が置き去りにならないよう、時代の流れにしっかりついていってもらう、もっと言えば先行していってもらうことによって当然メリットがあると思っています。脱炭素の潮流の中でも企業様が成長していただく形をうまく作り上げることができれば、おそらく地域金融機関の私どもにとっても色々な意味でプラスになると考えています。

地域と金融機関はある意味共同体だと思っているので、中堅・中小企業様が元気であれば、私どもとしても喜ばしく、やりやすい事業環境であるのは間違いないと思います。逆を言えば、中堅・中小企業様が痛手を被ってきますと、私どもも経営もマイナスの状況になってくるんだと思います。

そのために、事業者様にはメッセージを上手く、且つたくさん伝えていく必要があります。人手もない中、そんなに多く情報が入ってくる環境ではないと思いますので、私どもがいち早く情報やツールを提供して、中堅・中小企業様にとって継続できる事業環境や事業基盤を作っていただけるお手伝いをしていきたいと思っています。

――地域の中小企業様の脱炭素の意識はどのような感じでしょうか。

荒川様:決して高いとは言えないですね。徐々にですが、銀行からの情報提供や、サプライヤーからのアンケートの強度が強まってきているのは現場サイドとしては実感しています。今後ますます実感されていくことは間違いないのかなと思っています。

中国銀行外観

ホワイトラベル『ちゅうぎんGXボード』*1)の無料提供により、「測る」を促進

――そのようななか、御社から中堅・中小企業様に対して、脱炭素の取り組みをどのように働きかけていらっしゃるのかをうかがえますか。

荒川様:GHG(温室効果ガス)排出量の算定ツールとして、「Zeroboard」のホワイトラベルである『ちゅうぎんGXボード』を提供しています。提供していく中で、お客様のフェーズ別での支援メニューを用意しています。具体的には、啓発・理解、測る、目標策定・認証取得、削減、開示、といったフェーズに分けられ、一応それら全てに対する支援を整えられている状況ではあります。

――御社の営業の方がお客様にヒアリングしてフェーズを判断される形なのでしょうか。

荒川様:はい、営業店にはお客様との会話のためのテンプレートは用意しています。対話の中でどのフェーズか、どのような要望があったかなどをまとめて、我々の方に相談が来るようなイメージです。

営業店への浸透は我々の課題でもあるのですが、約140店の支店がある中で、各店に1名ずつサステナビリティ推進担当者を配置しています。その担当者を中心に集合研修を年に何度か行ったりしていて、本当ならそこで得たことを各店に持ち帰って浸透させていくという動きをしているものの、なかなか浸透しづらい実情はありますね。各営業店に浸透させていくことで、もっとお客様からの反応や要望を上げてもらう動きも増えていくのではないかと思います。

――先ほどのフェーズの中の「測る」で、「ちゅうぎんGXボード」を提供されていると思いますが、今どのくらいの企業数に導入されていますか。

荒川様:発表から約1ヶ月になりますが、今30件のお申し込みをいただいています。(※9月18日の取材時の実績。11月現在で200件の受注。)

脱炭素を進めていく上で、まずは測ってもらわないことには始まらないですよね。有効な削減策を立てるためには、まずは「測る」と言うことを浸透させたいなという思いがありました。

ゼロボードさんとは2年前からビジネスマッチングの提携はさせていただいていました。ただ、ゼロボードさんの通常プランは上場企業様を含めた大企業様のご利用が多い印象で、中小企業様にとっては月々の利用料がネックになってしまいます。例えば、GHG排出量算定に月10,000円となれば、コストが高いと思われてしまいます。そこでもう少し取り入れやすい価格、使いやすいツールにするためにはどうすれば良いかをゼロボードさんに相談しました。そこでホワイトラベルのお話をいただき、機能もシンプルにして、無料プランも含めた利用しやすい価格で提供することで、中小企業様にも刺さり、まずは「測る」を始めてもらうことができるのでは、というのが今回の取り組みです。

企業様は投資回収という目線で見られるので、これにいくらかけていくら儲かるのか、という話になるのですが、これは企業価値を高めるための投資になるので、まずは取っかかりとしてご利用いただけるツールを提供しなければと考えました。

まずは無料で試してみて、行けそうだなと思えば上位プランや、ゼロボードさんの通常プランに移っていただければ良いのかなと思っています。

「測る」ことのインセンティブは、取引への好影響、法整備への早め対応、Z世代への採用効果

――企業様にとって測ることがなぜ必要なのか。測ることによるメリットやインセンティブとは何か、どのような効果を期待されているのかを教えていただければと思います。

荒川様:業種業界やサプライチェーン上の立ち位置などによって濃淡はあるとは思いますが、排出量の算定・報告が求められていく企業様は増加していきます。対応していかなければ、いずれ取引に影響を及ぼす可能性が非常に高いと考えています。まずは排出量の把握、そして削減に向けた手段を検討していただけるメリットがあります。今後炭素税が適用されるとされていて、そのような法整備にも早めに対応できるのも「測る」に取り組むメリットです。

それ以外ですと、社会課題の解決に意欲的な学生の採用活動にも影響してくると思います。また、SBT認定の取得をすれば公共工事の入札や補助金申請における加点になるインセンティブはあります。インセンティブはまだ少ないかもしれませんが、今後は強化されていく流れになるのかなと思いますので、将来的には期待できると考えています。

――ツールによって今の排出量と設備投資後にどれくらい減るかが可視化されると分かりやすいですよね。

荒川様:例えば工場が何ヶ所かあれば、この工場とこの工場で何がそんなに違うのか?という分析もできるじゃないですか。しっかりと拠点ごとでまず測って分析し、戦略を打つためには、まずは可視化というのが必須だと思います。

「ちゅうぎんGXボード」でのGHG算定をきっかけに、企業様と一緒に削減策を考えていきたい。企業の成長が中国銀行の成長につながる。

――今後ゼロボードと一緒に勉強会なども開いていくそうですね。両社協働でどのように脱炭素を進めていかれますか。

荒川様:「ちゅうぎんGXボード」で算定された企業様には算定だけではなく、一緒に削減策も考えていければと思っています。

サステナビリティ・リンク・ローン、グリーンローン、インパクトファイナンスなど、サステナビリティファイナンス関連は揃えていますので、優遇条件として測ることが必要な企業様もいますし、これまでのエクセル管理をクラウドに移行していただくということもあり得ます。

企業様が「ちゅうぎんGXボード」で算定されたデータは弊行でも確認できますので、それを元にタイムリーにアドバイスしたり、相談お受けしたりすることもできると思います。

――脱炭素支援を始められてから取引先企業様の反応は徐々に変わりつつありますか。

荒川様:まだ始めたばかりではありますが、「ちゅうぎんGXボード」についてや、それ以外の脱炭素メニュー全般について、支店からの相談件数は増加傾向にあります。

個人的には、すでに手厚い予算がついている省エネ補助金だけでなく、そこまでの過程である、啓発や算定という段階に公的なフォローがあると、企業様も取り組みを始めやすいのかなと思います。それとSBT認証を取得していることは、ステークホルダーからも喜ばれるので事業機会を模索する上では有効だと言えると思います。実際にSBT認証を取得している企業様同士でコミュニティが生まれて、そこからビジネスに繋がったという話はあります。

――中国銀行様は、ファイナンスド・エミッションを算定する「Zeroboard for the PCAF Standard」を導入されました。どのような狙いや目的がありますか。

河内様:地域企業様が脱炭素への取り組みを進められて強固な事業基盤を作られることで中国銀行が発展し、それにより中国銀行のカテゴリー15(投融資先の排出量)のスコアが改善していくだろうと考えています。二次データで計算しているうちは、「融資量を減らさない限り排出量は減らない」というところにしか行き着きませんので、そうなれば銀行自身が成長意欲を諦めていることになってしまいます。当然、銀行は銀行業の中で成長を目指していて、それがこの脱炭素への取り組みだと思っています。

引き続きよろしくお願いいたします。

――今日はありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。



*1) 「ちゅうぎんGXボード」の概要

https://www.chugin.co.jp/assets/media/2024/08/240801.pdf?0c74d867e58d09ee44095dc1be2df4dc

(関連情報)

・日刊工業新聞社にご取材いただいた記事も公開されています。

どうする中小の脱炭素。中国銀行・岩手銀行…地域金融機関が担う先導役