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株式会社光陽社

印刷物のライフサイクルにおけるCO2排出量を算定し、「環境配慮型プリント」としてサービス化することで大手企業を中心にアポイント獲得率が2倍以上に。脱炭素とビジネスの両立を実現した光陽社が目指す印刷業界の未来とは

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ご担当者

生産本部システム部 部長

千葉 達也 様


サステナビリティ事業部 部長

佐々木 雅規 様


国全体で2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す中、各業界・企業でさまざまな取り組みが進められています。しかし環境対策とビジネスの両立に悩んでいる企業の声があることも事実です。そこで今回は、全事業所・工場のScope 1,Scope 2のカーボンニュートラルを実現し、「環境配慮型プリント」で業績アップにも成功している株式会社光陽社に伺い、脱炭素に取り組んだことにより得られた効果や、印刷業界全体の脱炭素に取り組む理由をお聞きしました。


  • 脱炭素に取り組み始めた背景
    • 紙や化学薬品を使う印刷業界として、早い時期から環境への問題意識を持ち、取り組んでいた
    • 環境への取り組みを通じて得たノウハウを、持続的なビジネスにしていけると考えた
  • 取り組み内容
    • CO2排出量を算定し、排出量が実質ゼロの環境配慮型プリントをサービス化
    • 再エネ電力への切り替え、PPA(電力販売契約)で太陽光パネルの設置、EV車への切り替え、EMS(エネルギーマネージメントシステム)の導入
    • 日本サステナブル印刷協会を設立し、会員に環境対策のノウハウを提供
  • 得られた効果
    • 大手企業を中心に新規アポの獲得率が2倍以上に増加 
    • 自社工場の再エネ化、環境に配慮した印刷方法への切り替えによる内製率の向上

持続可能なビジネスのきっかけは早い時期からの環境問題への意識から

生産本部システム部 部長 千葉 達也様

――環境対策への取り組みについて教えてください。

千葉様:環境省が発足した2001年には、すでに環境問題への対策を始めていました。印刷業界は紙を使うので「木を伐採するのは環境にマイナスだ」と言われますし、化学薬品も使うので、早い時期から問題意識を持っていました。GP(グリーンプリンティング)認定(注1)を取るなど環境に配慮した取り組みを進めており、私自身も当初から関わりながら知見を深めてきました。
(注1)印刷業界の環境自主基準に基づく認定制度。

佐々木様:私は2021年から環境対策に関わるようになり、2023年4月に立ち上げたサステナビリティ事業部の部長になりました。それまでは企画開発部で印刷だけではなく、Webサイトや動画の制作など、物を作る部分に関わってきました。サステナビリティ事業部のミッションは光陽社の環境への取り組みを持続可能なビジネスにすることです。

――環境への取り組みをどのようにビジネスにしているか教えていただけますでしょうか。

千葉様:光陽社はお客様のカーボンニュートラル達成を支援するサービスを2021年に始めました。「カーボンゼロプリント」と「カーボンニュートラルプリント」があり、どちらも環境配慮型プリントとして提供しています。

「カーボンゼロプリント」は、Scope 1,Scope 2のCO2排出量が実質ゼロで稼動している工場で印刷した印刷物に「カーボンゼロプリント工場」マークをつけて提供するサービスです。追加費用はいただいておりません。お客様は、環境負荷の低い印刷業者を選ぶことがSDGsへの貢献につながり、対外的に環境に配慮していることをアピールすることができます。

「カーボンニュートラルプリント」は印刷物のライフサイクルにおけるCO2排出量を算定し、有償でカーボンオフセットするサービスです。印刷物には「カーボンニュートラルプリント」マークを表示でき、カーボンオフセットを行った証書も発行しています。

24時間年中無休、実質カーボンゼロで稼働する飯能プリンティングセンターBASE

環境配慮型プリントのマーク(カーボンゼロプリント〈左〉とカーボンニュートラルプリント〈右〉)

環境配慮型プリントのサービス化がきっかけで大手企業を中心に新規アポイント獲得率が2倍以上に

サステナビリティ事業部 部長 佐々木 雅規様

――環境配慮型プリントの反響はいかがでしょうか。

佐々木様:非常に好評です。カーボンゼロプリントは追加費用をいただかずに、環境に負荷をかけない工場で作ったことを周知できるマークをつけることができます。光陽社としても新規のお客様が増え、売上に貢献するサービスに育っています。

千葉様:感覚値ですが今までの倍以上の確率で商談のアポイントをいただけるようになりました。もちろんそれだけの影響とは限りませんが、環境対策への意識が高い大企業を中心に引き合いが増えています。

佐々木:そもそも電話をしてもアポイントを取れなかったところから、これをきっかけにアポイントを取れた大企業が多いですね。このサービスを始めてから、東証プライム企業を中心にテレアポをするようにしていて、そういうところのアポイントも実績として取れています。

――一方で、環境に配慮した設備を導入した際のコストはいかがでしたでしょうか。

千葉様:もちろん光陽社の工場をカーボンゼロにするためにコストや手間がかかっていますが、それを考えても会社全体として利益が上がっています。CO2排出を実質ゼロにするために再エネ電力に変えて、車をEVにしました。特に今、電気代がすごく上がっていますので、PPA(電力販売契約)で太陽光パネルもつけました。再エネ電力への切り替えで非化石証書代はかかりますが、それを吸収できるプラスがあります。

経営者の本気度が問われる環境への取り組み。「見える化」はコスト削減や新たなビジネスのきっかけに

――印刷業界は規模が小さい会社も多いと伺いました。印刷業界全体でカーボンニュートラルを実現するために必要なことはなんでしょうか。

千葉様:まずは見える化です。「Zeroboard」はそのために必須のツールです。見えないことには手をつけられません。CO2がどれだけ出ているのかを見ていけば、印刷工程のどの部分のCO2を減らせばいいのかがわかり、コスト削減にもつながります。やや専門的になりますが、光陽社では現像機を使わない方法に変えることで劇薬の取り扱いをゼロにし、廃液を出さなくなり、さらに電気代も減らしました。環境に良い取り組みがコスト削減などビジネスへのプラスにつながります。最初は費用がかかるので、環境対策への経営者の本気度も問われますね。

また、環境に配慮した印刷の普及などを目的とする、日本サステナブル印刷協会を2022年に設立しました。協会に加入いただいた印刷会社に光陽社が培った環境対策のノウハウを提供し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを行っています。具体的にはCO2排出量を算定するツールの提供やカーボンゼロプリント工場の認定、カーボンニュートラルプリント、カーボンオフセットの実施支援などを行っています。

佐々木様:協会では、工場をカーボンゼロにしたことを証明するマークを無償で発行しています。印刷業界全体の脱炭素を進めるために会費は無料にしていて、私たちの持ち出しで運営しています。印刷業界は中小企業も多いですが、企業の規模に関係なく脱炭素に取り組める環境を作りたいと考えています。弊社の代表が環境対策を活用した営業向けの勉強会も行っていて、環境対策とビジネス両方にプラスとなる形を目指しています。

カーボンニュートラルプリントが普及し、印刷業界全体がサステナビリティに貢献していることを知ってもらうことに価値がある

――素晴らしい取り組みだと思います。一方で、ノウハウを無償で提供すると競争力に影響を及ぼすとも考えられますが、どのようにお考えでしょうか。

千葉様:確かに同業の会社さんが会員ですので、現に仕事でもバッティングしたことがあります。ただ、それよりも全体にカーボンニュートラルプリントマークが普及し、印刷物の計算方式がスタンダードになることで、印刷業界もサステナビリティに貢献していることを知っていただくことに価値があると信じています。印刷業界は弊社のようなチラシやパンフレット、ポスターなどをメインとする商業印刷だけではなく、出版やパッケージ、フレキソ印刷など多岐にわたっています。ぜひ会員になっていただき、LCA(ライフサイクルアセスメント)を基にした計算方式に加えて、「Zeroboard」の仕組みを使った組織全体のCO2排出量の見える化も協会を通して浸透させていきたいです。「Zeroboard」を使ってScope 3まで算定することや、会員が連携してカーボンニュートラルを目指すサプライチェーンの構築を実現させることを目指していきます。

これからも光陽社様、そして印刷業界全体が脱炭素経営に取り組んでいけるようご支援させていただきたいと思います。本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。



関係者のコメント

株式会社ゼロボード
カスタマーサクセス部 

脱炭素支援エキスパート

柴車 瑛太
医療系総合商社にて100社以上の開業〜経営支援を経験。 その後デジタルマーケティング領域においてSaaSツール導入後の運用支援(カスタマーサクセス)として従事。 支援実績:プライム上場製造業、商社GHG算定支援 ――印刷業界において協会を設立し、同業他社を巻き込んで積極的に脱炭素に向けた取り組みを進めている姿勢に感銘を受けました。環境への配慮とビジネスの成功を両立させる優れたモデルだと感じております。 今後も貴社の取り組みを全面的に支援させていただけますと幸いです。