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スポーツ界の気候変動対策

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ゼロボード総研 アナリスト 鍋島 美月

2024年夏のオリンピック「パリ2024」の開催が目前に迫っています。今大会では「大会のカーボンフットプリント半減」*1が宣言されるなど、環境面の取り組みも注目ポイントの一つです。スポーツ界も気候変動の影響を受ける中で、どのような取り組みが求められているのか探ります。

気候変動の影響

スポーツ界が気候変動から受けている影響は様々です。気温上昇による熱中症リスクの上昇、干ばつや洪水などによる競技場の劣化や怪我リスクの上昇、異常気温によるイベント時期の変更など、すでに影響は顕在化しています。つい先日には、競歩の鈴木雄介選手をはじめとする世界のスポーツ選手らと研究者らが、気候変動によって悪化する猛暑の中で競技を行う危険性を訴えるなど*2、著名なアスリートも気候変動対策の必要性を訴えています。

一方で、スポーツ界が気候変動に与える影響はどうでしょうか。競技によっても異なりますが、施設の建設、エネルギー利用、食事の手配、移動などを通じた排出が考えられます。特徴的な点としては、間接排出(Scope 3)に含まれる移動に係る排出が多い点です。移動には、スタッフや選手の移動の他、観客の移動が含まれ、国をまたいでの移動が増える世界大会の実施では間接排出の7割以上が移動に係る排出になることもあります。

出典:AELTC「Our Operational Emissions」

テニスの国際大会ウィンブルドンの排出量内訳*3。Scope 3の中でもスタッフ・選手・関係者のフライトに係る排出量が7割以上を占めています。

スポーツを通じた気候変動行動枠組み

こうした背景から、スポーツチーム自体の排出削減はもちろんですが、スポーツに関連して動く人々の排出量を、スポーツ界からの働きかけによって減らせるのではないか、と期待が寄せられています。

その一つが、「スポーツを通じた気候行動枠組み(Sports for Climate Action Framework)」*4です。2018年、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が国際オリンピック委員会(IOC)と連携して立ち上げたもので、世界スポーツ界が一丸となって気候変動問題に対し行動を起こすための枠組みとなっています。5つの原則のうち、原則5では「情報発信を通じ、気候変動対策を求める」と書かれています。スポーツの持つ情報発信力やファンへの影響力を活用することで、地球環境を守ることへの社会的責任を果たし、スポーツ界がリーダーシップを発揮するんだ、という行動への意思が感じられます。

日本での取り組み事例

日本でも取り組みが始まっています。一般社団法人Sport For Smileが主宰するSport For Smileプラネットリーグ「エリートエイトプログラム」では、少数精鋭の日本スポーツ界のトップチームに向けて、気候変動対策の推進とファンへの訴求を支援しています。上記の国連の枠組みに日本から署名している団体はまだ数団体に限られ、世界では必須とされる温室効果ガス排出量計測削減の実践が十分に進んでいない実態の改善に、弊社もストラテジック・パートナーとして協力しています。*5

まとめ

スポーツは情熱や感動をファンと共有し、社会にとって重要な情報を広めていく力を持っています。スポーツを楽しみながら地球の未来のために行動する、それが当たり前になる未来がパリオリンピックで垣間見えるのではないかと期待しています。


<参照元>

*1)パリオリンピック「競技大会のカーボンフットプリントを50%に」 2024年7月3日
https://olympics.com/ja/paris-2024/our-commitments/the-environment/carbon-method

*2)BASIS「Rings of Fire Ⅱ」2024年7月24日、P24「Yusuke Suzuki – RACEWALKER, JAPAN」
https://basis.org.uk/resource/rings-of-fire-2/

*3)出典:AELTC「Our Operational Emissions」2024年7月22日
https://www.wimbledon.com/pdf/AELTC%20Sustainability%20chart%202023%20final.pdf

*4)「スポーツを通じた気候行動枠組み」2024年7月22日
https://www.unic.or.jp/files/c6509b8eadff5384180a1fd439669a4b.pdf

*5)「Sport For Smile プラネットリーグとゼロボードが連携 気候変動対応をスポーツの力で加速」2024年7月3日
https://zeroboard.jp/news/press-release/2750/

  • 記事を書いた人
    鍋島 美月(ゼロボード総研 アナリスト)

    2017年より環境NGOに所属し、教育普及・会員管理・財務経理・総務等々担当。自然資本情報開示のリサーチを担当。筑波大学 生命環境学群 生物資源学類卒業(森林生態学)