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「Zeroboard」導入後のアフターストーリー: 燃料転換や再エネ活用により脱炭素経営を推進

  • 既存製品・サービスの競争力アップ
  • 企業のPR
  • 従業員の意識向上
  • 〜300人
  • 非上場
  • 製造

概要

株式会社上田商会

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ご担当者

代表取締役社長 上田 朗大 様

管理本部 CN/ESG推進室 室長 古川 浩勝 様

温室効果ガス排出量を算定する上で「Scope 1(自社による直接排出)」「Scope 2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)」はそれぞれの企業で取り組みやすいものの、「Scope 3」は原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るまでの過程、いわゆる事業者の活動に関連する他社による間接排出の算定に取り組まなければならず、その複雑さから対応できずにいる企業は少なくありません。

株式会社上田商会(北海道登別市)は1925年の創業以来、コンクリート製品の製造・販売を担っています。温室効果ガスの管理が属人化しないようシステム活用を検討しているなか、岩谷産業を通じてゼロボードに声がけいただきました。今回は脱炭素化に取り組み始めた経緯や、CO2排出量の削減に向けた取り組み、今後の展望についてお聞きしました。

ポイント

脱炭素に取り組み始めた背景
ESG経営等も注目される中、環境に配慮した事業へと転換したかった
ゼロボードに決めた理由
算定ツールの提供だけではなく、今後のScope 3に対する専門的知見の提供に期待できた
ゼロボードのパートナーである岩谷産業から、システムの特徴や導入メリットを知ることができた
得られた効果
太陽光発電に加え、燃料転換を実施し、エネルギーのCO2排出量削減に取り組むことができた
SBTイニシアチブ認定の取得、TCFDへの参画、森林の取得を通して、社内外へ環境への取り組みを認知してもらえるようになった
社員がコンクリート製造企業でも取り組める「脱炭素」について意識するようになった

ESG経営の流れを踏まえ、事業の方向性を転換

脱炭素に取り組み始めた経緯を教えてください。

上田様:2020年頃から、「ESG経営」という言葉も頻繁に耳にするようになり、私たちの事業においても環境に配慮していく必要があるのではないかと感じていました。

そのような中、当社の主力製品であるコンクリートの製造にかかるCO2排出量を削減しようと、一部の工場で低炭素型のエシカルコンクリート「TUTUMU」を製造することを計画し、最終的に2022年の6月には全ての工場で製造することに決めました。

「TUTUMU」とは、どのような製品なのでしょうか?

上田様:産業副産物であるフライアッシュや高炉スラグ微粉末を使用した環境配慮型のコンクリートで、耐久性や強度に優れています。通常のコンクリートに比べてセメントの使用量が少なく、材料由来の二酸化炭素排出量を平均41%、1トンあたり約50kg削減できます。

続いて「Zeroboard」を導入した経緯について教えてください。

古川様:これまで温室効果ガス排出量はExcelで管理していました。Scope 1、Scope 2であれば自社で算出が可能でしたが、属人化してしまうことが課題でした。また、Scope 3はサプライチェーン全体の排出量を算出しなければなりません。私たちの事業において、Scope 3排出量の大部分を占めるのは、コンクリート製品の原料であるセメントです。セメントの製造過程では多くのCO2が発生するため、そこに対して今後、同業他社がどのような対応を取っていくのか情報収集したいと考えていました。

ゼロボードのパートナー企業である岩谷産業から提案があり、将来にわたって脱炭素に関する知見を提供いただけるのではないかと思い、2023年4月から利用を開始しました。

CO2を「Zeroboard」で可視化し、岩谷産業と燃料転換に取り組み削減

「Zeroboard」をどのように活用されていますか?

古川様:Scope 1~3の管理を「Zeroboard」で行っています。システムで管理することで、容易に算定でき、またシステム上で算定結果の可視化も即座にできます。

 

上田様:原材料由来のCO2排出量を何トン削減したか、公式サイトで表示できるようになりました。

お客様に対しても、以前は工事でどれくらいCO2排出量を削減できたか数値を報告していただけでしたが、現在は見積もりの段階から「弊社であればどれくらいCO2削減できますよ」とご提示することが可能になりました。喜んでくださるお客様もいらっしゃり、徐々にサステナブルな取り組みが浸透しているように感じています。

「Zeroboard」導入後に燃料転換を取り組まれました。

古川様:「Zeroboard」導入により、CO2排出量の可視化をシステム化した後、自分たちで削減可能なScope 1・2の削減に向けた取り組みを進めました。コンクリート製品の製造におけるエネルギー消費は全体の1〜2割程度ですが、この部分のCO2排出量が、まず重要です。砂原工場では、岩谷産業から提案のあった補助金制度を活用し、2024年2月にLPガスへの燃料転換および高効率な蒸気ボイラへ設備を更新しました。重油からLPガスに転換することで、エネルギーにかかるCO2排出量を、従来の15%ほど削減できており、高効率ボイラになったことによる省エネ・CO2削減効果も期待しています。

「Zeroboard」によるCO2可視化により、岩谷産業と取り組んでいる燃料転換によるCO2削減効果を実感しています。

さらには、砂原工場では太陽光パネルも設置し、電力由来のCO2排出量の削減にも取り組みました。

千歳工場でも約15年前から都市ガスを使用しており、CO2排出量削減に効果をもたらしています。太陽光発電も導入しており、夏の時期は60〜70%のエネルギーを賄っています。

その他に取り組まれていることはありますか?

上田様:ネイチャーポジティブ*の観点から、森林育成にも取り組んでいます。2023年12月に石狩市厚田区の山林を購入し、石狩市森林組合様と協力して管理しています。

*:生物多様性などの自然資本の毀損に歯止めをかけ、将来的には回復軌道に乗せる取組みのこと

サステナブルな取り組みを推進し、サプライチェーン全体で脱炭素化を目指す

コンクリートメーカーとして、日本で初めて「SBTイニシアチブ」の認定を取得されました。

上田様:SBTイニシアチブは、科学的根拠に基づいた具体的な目標によって、温室効果ガスの排出削減目標を設定できる国際イニシアチブです。正直なところ、SBTイニシアチブの認定を取得していることを理由に、お客様が上田商会の製品を選ぶケースはまだ少ないのが現状です。ただ本認証をいち早く取得することで、環境に配慮した取り組みを実施している企業として認知されやすくなったのではないかと感じています。

その他にも、気候変動に関する財務情報開示を積極的に進めていく「TCFD」にも参画しました。

今後、さらなる脱炭素の推進に向けて、どのようなことに取り組まれていきますか。

古川様:太陽光発電や燃料転換をさらに推進すると共に、Scope 3削減に向けて、セメント使用量の削減を進めたいと考えています。コンクリートに強度と耐久性を与えるセメントは、その原料1トンに対して、760kg程度のCO2を排出します。コンクリートの製造に必要なエネルギーに伴うCO2排出量は1、2割程度。つまり、CO2排出量の大半がセメントによるものです。

セメント原料を1割でも減らしたら、トータルで約4,000トンのCO2排出量の削減につながります。これは、当社のScope 1、Scope 2のCO2排出量を全て削減するのと同等の効果があります。

実際に、産業副産物である高炉スラグ微粉末やフライアッシュを利用した環境配慮型のコンクリートの製造に成功したことで、一般的な配合のコンクリート製品に比べて、CO2排出量を平均41%削減することに成功しています。これは非常に大きな効果です。

 

古川様:また、原材料調達においても、CO2排出量の少ない材料を選択していきたいと考えています。取引先となるコンクリート会社もCO2排出量削減に取り組む企業を優先し、サプライチェーン全体で協力してCO2排出量を削減していきたいです。

今後、セメントメーカーがCO2排出量の少ないセメントを開発することで、さらなる排出量の削減が期待できます。セメントメーカーのCO2排出量に関する情報が、ゼロボード社を通してコンクリート製造業者に提供されれば、より環境負荷の少ないセメントを選択することができます。

 

上田様:コンクリート製造時のCO2排出量を実質ゼロ以下に引き下げる「カーボンネガティブコンクリート」の開発も進めています。移行できるタイミングを見計らって導入を予定しており、砂原工場で実証実験を行っています。

「TUTUMU」をブランディングすることによって、業界全体で低炭素配分のコンクリート使用に切り替えていくところも増えてきています。すでに、札幌や茨城の企業との契約を予定しており、自社ブランドを使った取り組みがさらに広がることを期待しています。

岩谷産業とゼロボードと共に低炭素化に向けた取り組みを続けることで、少しでも社員が脱炭素への意識を高め、自社の取り組みに誇りとやりがいを持っていただきたいと思っています。また、お客様の視点で上田商会に対するイメージが向上していけば嬉しいです。