Scope 3削減のためのサプライヤー向け施策をゼロボードが伴走支援。勉強会を起点に生まれた変化とは
ご担当者
本社 企画本部 サステナビリティ推進部 環境企画課 課長
山本 敏之 様
精密機械・ロボットカンパニー 企画本部 ロボット経営管理部 主事
今堀 早貴 様
CO2に代表される温室効果ガス(GHG)の排出量はScope 1〜3に分けて算定します。自社内で完結するScope 1、2と違い、サプライヤーなど自社と関連のある他社の協力が必要になるScope 3の算定・削減は多くの企業の課題です。実際にゼロボードにも相談が寄せられており、サプライヤー向け施策の伴走支援を行っています。
そこで今回はゼロボードがサプライヤー向け勉強会などの支援を行った川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)に、Scope 3削減の課題や解決のための取り組み、今後の見通しについてお聞きしました。
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課題・ 導入背景
- Scope 3の削減を自社のみで進めることが困難
- サプライヤーとの協力体制の構築
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ゼロボードに 決めた理由
- Scope 3削減に向けた取り組みを支援してくれるため
- ゼロボードの担当者の専門性と丁寧なコミュニケーションによる信頼
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導入効果・今後 期待される効果
- サプライヤー向けの説明会と勉強会の実施
- Scope 3削減への道筋の明確化
- 社内のカーボンニュートラルへの機運醸成
カーボンニュートラル達成のための課題はScope 3削減
――今回はカーボンニュートラルに本社とロボットディビジョンで取り組んでいるお二人に話をお聞きします。最初に担当されているお仕事について教えてください。
山本様:本社で川崎重工グループ全体のカーボンニュートラルに向けた目標設定やロードマップを描く役割を担っています。重要性が高まっているESG評価の対応等も行っています。
今堀様:産業用ロボットの開発・製造・販売を中心に行うロボットディビジョンにおいて、カーボンニュートラルに関わる仕事を担当しています。2022年末に立ち上げたロボットディビジョン内のカーボンニュートラル委員会の事務局として、当ディビジョンのカーボンニュートラル活動の推進を行っています。ロボットディビジョンには、半導体業界や自動車業界等、カーボンニュートラルへの意識や要求水準が高いお客様が多いということもあり、お客様や社会が求める価値をいちはやく提供するため、川崎重工グループ全体の取り組みと同時並行で、ディビジョン内の委員会を立ち上げました。
山本様:Scope 3 については「Zero-Carbon Ready」を目標に掲げ、2040年にCO2 FREEなソリューションをラインナップする取り組みを進めています。カテゴリー1については2040年までに2021年度比で80%削減することを目標にしています。削減にあたっては、まずCO2の見える化が必須のため、複数社から話を聞き、最終的にゼロボードに決めました。
本社 企画本部 サステナビリティ推進部 環境企画課 課長 山本 敏之様
Scope 3削減のためにゼロボードに相談。決め手はサプライヤー向け支援の専門性と手厚さ
――ゼロボードに決めた理由について教えてください。
山本様:決め手はゼロボードの専門性と支援の丁寧さ、そして川崎重工のサプライヤー向けにカーボンニュートラルに関する勉強会実施の支援をしていただけることです。Scope 3はExcelを使って本社で算定していましたが、自力で進めるのは限界だと判断してゼロボードに支援いただくことにしました。Scope 3については2014年頃に環境省の支援を受けてカテゴリー1から15まですべて算定していましたが、昨今のGHGプロトコルを見ていて専門的な知見の必要性を感じたため、ゼロボードに客観的な視点からアドバイスをもらった方が良いと考えました。
――サプライヤー向けの勉強会支援も決め手だったんですね。詳しく教えていただけないでしょうか。
今堀様:川崎重工のサプライヤー向け勉強会はロボットディビジョンが先行して実施しており、2023年6月の初回説明会実施後、年度内に4回の勉強会を開催しました。
勉強会では、カーボンニュートラルとは何か、Scope 1〜3とは何か、温室効果ガス削減の背景や算定内容、1次データと2次データの違い、算定用テンプレートを用いた具体的な算定方法、カーボンフットプリントなどの内容をお伝えしてきました。
勉強会の開催にあたっては、ゼロボードの担当者に他社事例等も踏まえて非常に細やかにアドバイス頂きました。当初、サプライヤーの理解度はまちまちで、「カーボンニュートラルって何?」という反応も多くありましたが、調達担当者との会話などから、カーボンニュートラルへの理解や必要性への共感が少しずつすすんできていることを実感しています。
――サプライヤー向けの取り組みについて、ゼロボードに依頼いただく前から進め方のイメージはできていましたか?
今堀様:カーボンニュートラルを進めるための実践知識が乏しい状態からのスタートだったので、明確なイメージは全くできていませんでした。もちろん自分たちでも勉強をしますが、他社の事例も含めてゼロボードにイチから教えていただきながら進めています。勉強会の内容や開催する時期も相談していて、初回の説明会では川崎重工の考えや方向性をサプライヤーに正確にお伝えするため、説明内容の校正まで支援いただきました。
ゼロボードの専門家からも「サプライヤーにいきなりCO2排出量の算定を求めると混乱させてしまうかもしれない」とアドバイスをいただいたこともあり、丁寧に啓発活動から始めています。アンケートでも、最初からCO2排出量の記入を求めるのではなく、現時点の取り組みやカーボンニュートラルに取り組むための組織があるかどうか、ロボットディビジョンが何か要請したときに前向きにご協力いただけそうか、といった内容をお聞きすることから始めました。
現在は、自社にとって大きな排出量を占める部分から一次データ置換をすすめていくため、取引の多いサプライヤーを数社選定させて頂き、「リーディングサプライヤー」として個別に排出量算出の検討をご相談させて頂いている段階です。こういった進め方もゼロボードにアドバイスいただきました。経験の浅い自分たちだけでは思いつかないことを提案してくれることもゼロボードを選んでよかった理由の一つです。
サプライヤーと協力しながらScope 3削減へ。カーボンニュートラル達成への社内機運も醸成
――Scope 3の算定に使っていただいているZeroboardの良い点を教えていただけないでしょうか。
山本様:本社では川崎重工グループのGHG算定を金額ベースで行っており、ロボットディビジョンでは調達部門を中心に重量ベースの算定に着手しています。調達金額ベースのデータをZeroboardに取り込むことで、あまり人手をかけずに数字を出せるのはありがたいです。排出係数で迷った際にも、ある程度直感的な操作で解決できるので助かっています。
今堀様:ロボットディビジョンの算定データ整理においても、ゼロボードの専門家がかなり細かい実務上の疑問、例えばこの品目にはどの排出係数が適切か等まで一つひとつつぶしてくれています。また、調達担当者がZeroboardにデータをインポートすると、すぐにダッシュボードで確認できるので、結果を確認したい事務局としても助かっています。想像していた以上に緻密に伴走してくださっており、最初から川崎重工のメンバーだけではこのスピード感でここまで整理できなかったのではないかと感じています。
精密機械・ロボットカンパニー 企画本部 ロボット経営管理部 主事 今堀 早貴様
――サプライヤー向け施策へのゼロボードの支援はいかがでしたでしょうか?
今堀様:分からないことがあれば営業担当の方がすぐに回答してくださり、専門的なことはゼロボード社内の専門家が対応くださる体制になっていて、満足しています。サプライヤー向けの勉強会を自力で行うのは難しかったと思うので、なくてはならない存在です。またゼロボードが何回もサプライヤー向けの勉強会を継続してくれるとは思っていなかったので感謝しています。
――ゼロボードが支援に入ったことによってScope 3の削減への道筋は見えてきましたか。
今堀様:主要なカテゴリーについては算定の道筋がある程度見えてきたと思っています。特にカテゴリー1と4の、サプライヤーや輸送業者からデータを入手する部分についてはイメージができました。
1年ほどかけて啓発活動をしてきましたので、次はサプライヤーからデータを集め一次データ比率を高め、その精度をサプライヤーと協力して向上させていくフェーズだと考えています。勉強会から一歩進んだ、サプライヤー個社との個別の相談にもゼロボードに入っていただけると進めやすいと思いますので、そういった部分の支援も期待しています。
――Scope 3は1、2と比べると一段レベルが上がるため、対応に悩んでいる企業が多いです。最後にアドバイスをいただけないでしょうか。
山本様:まずはZeroboardでCO2排出量を見える化し、排出量の大きいサプライヤーと対話をしながら一緒に削減していくことが大事です。排出量の大きなところから優先順位をつけて一緒に対策を進めていきたいと考えています。
今堀様:Scope 3削減のためにサプライヤー向けの説明会をする際、たくさんのサプライヤーに集まって頂き、「CO2削減」という通常業務とは全く毛色の異なる話をすることに、最初は気後れしていました。しかし実際に始めてみると、サプライヤー側の状況も把握でき、協力的なサプライヤーも多くいらっしゃることがわかり、一歩ずつ前進することができています。最初の一歩を踏み出せば次に進む道が見えてきたので、まずはやってみることが大切だと実感しました。
山本様:本社側から見ると、ロボットディビジョンが最初の一歩を踏み出したことが川崎重工として大きいと考えています。第一歩となる説明会、勉強会がターニングポイントだったと思います。Zeroboardを使ったことによって、対外的な部分だけではなく社内にもプラスの影響がありました。最初はカーボンニュートラルを自分ごととして捉えきれていない人もいます。ゼロボードとの取り組みは、全社的に本気でやっていくことを社内に伝えるメッセージ効果も大きいです。