2024.05.23
コラム
欧州電池規則のCFP細則の解釈について①
ゼロボード 営業本部 ソリューション開発室 室長 野底 琢
2023年10月から2024年1月にかけて、欧州電池規則*1が自動車産業、バッテリー産業の事業者に及ぼす影響を3回のコラムに分けて共有した。今回は、2024年4月30日に欧州電池規則のCFP細則(ドラフト版)が公開されたことを踏まえ、同文書に基づいて、CFPの機能単位やMandatory Company Specific process(一次データでの算定必須プロセス)として規定された部品項目、サプライチェーン間でのデータ連携の在り方について紹介したい。
1.CFP細則の位置づけ
2024年4月30日に公開された細則は、車載バッテリーのCFP算定・検証の方法論を提示する「the methodology for the calculation and verification of the carbon footprint of electric vehicle batteries」*2(以下、「CFP算定・検証の細則」と仮称)と、その開示における宣言フォーマットを規定する「 the format of the carbon footprint declaration for batteries」*3(以下、「CFP宣言の細則」と仮称)の2つが存在する。いずれも草案であり、利害関係者からの意見を募集するパブリックコメントを受け付けているステータスにある。
両細則は、欧州電池規則のArticel7の「Carbon footprint of electric vehicle batteries, rechargeable industrial batteries and LMT batteries」*1を補完する。CFP算定・検証の細則については同規則のArticle7の「the delegated act or of the implementing act respectively referred to in the fourth subparagraph, points (a) and (b), whichever is the latest, for electric vehicle batteries」における「the delegated act or of the implementing act」を指し示すものであり、「電動車に搭載するバッテリー」に限定した施行となる。一方でCFP宣言の細則については、同細則のArticle7の「a carbon footprint declaration shall be drawn up for each battery model per manufacturing plant, in accordance with the implementing act referred to in the fourth subparagraph and containing」における「the implementing act」を指し示すものであり、CFP算定・宣言対象となる全てのバッテリーに適合した施行となる。
両細則について、構造としては下図の通りであり、委任規則としての既存の欧州電池規則との関連性と法的要素を取りまとめた規則文書とバッテリーメーカーに対する算定・開示要件をまとめたAnnex(附属書)の2部構成となっている CFP算定・検証の細則について、欧州委員会による環境フットプリント算定の勧告文書である「on the use of the Environmental Footprint methods to measure and communicate the life cycle environmental performance of products and organizations」*4に準拠しており、そしてその草案の内容は、欧州共同研究センターが作成したJRCレポート*5の内容を引き継いでいる。また、実際の算定業務におけるCFPデータの管理様式については「ILCDデータフォーマット」*6を、CFPデータの識別子(UUID)の命名規則については「ILCD命名のハンドブック」*7を準拠するよう記載されている。
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2.今後のスケジュール
本章では2024年4月30日に公開された「CFP算定・検証の細則」と「CFP宣言の細則」の発効から適用までのスケジュールについて、ZB社見解を説明する。全社は「委任規則(Delegated acts)」であり、後者は「実施規則(Implementing acts)」に分類される。それぞれの立法プロセスと、欧州電池規則の本体の記載事項から、必要期間を積み上げて適用開始日を推察した。
3.CFPの機能単位
一般的にCFPを算定・開示する単位は「機能単位」で設定する必要がある。そして「機能単位」は算定対象の製品の非とされた機能に基づき、その性能を定量化した指標で定義する必要がある。電動車に搭載されるバッテリーにおける機能単位と、その計算方法について紹介する。その上で本計算方法がEV、HV、PHVに及ぼす影響について弊社見解を説明する。
4.算定対象の製造工程/対象サプライヤー
欧州共同研究センターが展開した「Rules for the calculation of the Carbon Footprint of Electric Vehicle Batteries」(以後、JRCレポート)で提示された算定対象の製造工程、すなわち連携対象のサプライヤーからの変化点を説明する。JRCレポートと比較して、対象範囲が縮小され、かつ定義が具体化されている。
5.サプライチェーン間での連携方針
サプライヤーとメーカー間でのCFPまたはその内訳に関する情報の連携方針について説明する。連携自体の形態については、JRCレポートから大きな変化は見られないものの、より具体的な記載ぶりに変更された。
<出所先>
*1)欧州電池規則(Official Journal of the European Union)2023/7/28
*2)CFP算定・検証の細則(草案)
*3)CFP宣言フォーマットの細則(草案)
*4)環境フットプリント算定の勧告文書
*5)JRCレポート
*6)ILCDデータフォーマット
*7)ILCD命名のハンドブック
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<その他のコラム>
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